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期限の利益の喪失とは
1 はじめに
過払い金返還請求について現在も生きている争点の一つである,「期限の利益の喪失」をご説明します。
2 期限の利益の喪失
極度額の範囲内で借り入れと返済を長期にわたって繰り返している場合,一度も返済期限に遅れず返済していた,というケースはまれです。
どれだけ返済の管理がうまくできていても,1,2回程度は遅れています。
ところで,消費者金融業者やクレジットカード会社との継続的金銭諸費貸借契約書には,通常,1回でも返済が遅れた場合は当然に期限の利益を失って一括返済しなければならないと記載されています。
この契約条項を適用すると,1回でも返済に遅れると残高の全額についてその時点から遅滞に陥ることになり,遅延利率による遅延損害金が発生することになります。
ただ,実際には,ある返済期限に遅れたとしても次の返済期限が到来する前に返済しているケースがほとんどであり,その場合,業者は遅れた期間について遅延利率による遅延損害金を取ることはあっても,一括返済を求めることはほとんどなく,返済がなされた時点で通常利率に戻して取引を継続しています。
取引を継続した方が,業者にとっても利益になるからです。
3 期限の利益の損失が主張されうる場面
しかし,過払金返還請求の場面になると,一部の業者は,この返済期限に遅れた点を捉えて期限の利益を喪失したと主張し,それ以降について遅延損害金利率の適用を求めてきます。
利息制限法では,上限利率は通常利率より遅延利率の方が高くなっていますので,遅延利率が適用されると,過払金は通常利率で計算した場合よりも少なくなります。
この点について,業者の主張を認める下級審判決はほとんどなく,信義則によって業者の主張を排斥したり,期限の利益を再度付与したとして遅延日数についてのみ遅延損害金利率の適用を認める判決が大半です。
最近では,信義則の主張は排斥しつつ,後者(期限の利益を再度付与した)の主張を認容する判決が多くなっています。
なお,期限の利益を再度付与したとして遅れた日数について遅延損害金利率を適用したとしても,通常は,数百円から数千円過払金が減るだけです。
ただし,遅延した回数が多く,遅延日数も多くなる場合は,数万円減少することもあります。